2006/12/16

クアラルンプールの「カジノ•ロワイヤル」

深夜の事務所に電話が鳴り響いた。

ボクが眠い目を擦りながら電話に出るとフクロウからであった。「おい、明日を逃すともうパリからクアラルンプールへと続く航路は完全に断たれるからな。モンマルトルのコヨーテホテルで午前八時、遅れるなよ」。
僕は分かったと小さい声で応えて長椅子から立ち上がり、時計をもう一度確認した。

キッチンへ飲み物を取りにいく途中、応接のソファーでアリスが紫色の毛布に包まって小さく寝ていた。僕はそっと照明をつけた。「ごめんなさいね。昨日の彼の話が頭から離れなくて、この事務所へ戻ってきたの。」アリスはそう静かに囁いた。

僕は彼女の肩が小さく振動しているのに気付き、冷蔵庫からコロナ・エキストラを二本取り出してフタをあけると、そっと一本を彼女に渡した。何も心配はいらない、すべてはうまくいくさ。そういう僕の肩にアリスの長い髪が静かに触れるのがわかった。。
(作り話 つづく(かもしれない))


閑話休題。

ちょっと来年のいずれかのタイミングで日本に帰るかもしれないので、こっちでの航空券の相場を調べてみた。

学生の頃は日本からヨーロッパに行くときにはいつも東南アジア系航空会社を使っていた。そうすると安上がりな上についでにストップオーバー先の国で観光でき、放浪旅行者の僕にはとても便利だったからだ。

そこで今回も久しぶりに東南アジア系で、と思ったら、タイ、マレーシア、ベトナム経由、いずれの航空会社も思っていたより高くて、ANAやJALのほうがずっと安価なことに気付いた。大寒航空やアエロフロートでもANAやJALの100ユーロ増位。
まあ確かにこっちの人からしてみれば日本の航空会社も「アジア系航空会社」のうちの一航空会社にすぎない訳で、ブランド力はないのかもしれないけど、それにしても大寒航空より安いってのは不思議。

そういえば学生の頃、ヨーロッパから日本へ帰国する際にその経由地であるクアラルンプールの空港で友人と待ち合わせしたことがあった。東南アジア旅行をしていた彼と落ち合って一緒にクアラルンプール観光をするためだ。その旅行中では宿も中国人街の旅社一室しかとれず、窓のないうす汚い六畳部屋のベットでお互い背を向け合って寝たこともあったな。

それでなんで今その時のことを書いているかっていうと、 空港で会ったときに彼がえらく興奮していたことを思い出したからだ。

彼が話してくれた大凡のストーリーはこうだ。「街で英語が上手な若い女性と知り合い、一緒に観光をしていた。その彼女が、一緒にギャンブルでお金儲けをしないか、という。しかも俺はタネ金を出さないでも大丈夫だという。半信半疑でついていった先でポーカーをやってみると、買ったり負けたりしつつも、彼女がテーブルの下で出してくれたサインのお陰で結局数十万円もの儲けがでた。だが、ゲームの相手は現金の手持ちがないので、俺のクレジットカードを一回預かり、そこに振り込ませてくれという。そこでクレジットカードを預けようとしたが、お前と会う時間が迫っていたので、またすぐそこに戻る約束をし、後ろ髪を引かれる思いで空港に急いだという訳だ。」。

僕は なんだかとてもおかしくなって、丁度手にもっていた、地球の歩き方の「カジノ•ポーカー詐欺」のページを興奮気味の彼に読ませてあげたのだ。

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3 件のコメント:

De rien さんのコメント...

みどりです!
いや~せいじくん、作家の才能あるわ!!
すっごいおもしろかった~♪

anonymous さんのコメント...

→de rien
ありがとー。

三流ショートショートお見苦しくはないでしょうか。
今後もつづく、かもしれませんし、もしかしたらつづかないかもしれません。

De rien さんのコメント...

えー、ぜひぜひ続けてよ~
一読者として楽しみにしてるからね~♪