2006/12/25

コンラッドホテル

バンコク国際空港に到着する。

タラップを降りると、ねっとりとした熱気がシャツの中に入り込み、異国に来た事を実感させる。

もう日も沈みかかった午後5時、とりあえずホテルに向かうことにした。

ホテルはバンコク•コンラッドをとった。

外観は金色に煌々とライトアップされ、なんか場違いな感じもするものの、中はシックなインテリアで、バンコクの喧噪を少し忘れさせてくれる。

オリジナルのラウンジミュージックがホテルの中で緩やかに流れているのが聞こえた。このCDをアリスへのみやげにしよう、とも考える。

部屋のベットからはガラス越しにバスが丸見えだが、一人なので気にはならないだろう。

キャリーケースの荷物を一通りあけると、ベッドで天井を見つめながらひとしきり考えた。

...。

エリカはここタイにいるはずだ。でも万が一にも彼女に会ったとしてどうする?僕がここに来たのは、エリカに会うため、というよりもむしろフクロウへのシカエシのためなのではないのか?そうはいっても僕はシカエシなんて柄でもないし。。

きっとタシカメタイのだ。それだけだ。フクロウもここに来ているのだとしたら、会って話せば良いだけだ。それでパリへ帰ろう。

フクロウというビジネスパートナーを失った今、僕の事務所も、もしかしたら、たたまなきゃいけないかもしれない。いやそれとも、他に頼れる奴がいたかな?

...。

暫くそんなことを考えてみたが、考えがまとまる風でもないので、外の空気を吸いに行くことにした。

ホテルでも食事はとれたのだが、タクシーの運転手にカオサンへ一走りするよう頼んでみた。運転手は少し怪訝な顔をしつつも、安宿街まで車を走らせてくれた。

カオサン、この喧噪は懐かしい。

カオサンの中心街をちょっと外れた通りにイスラエルの若者達が集まるバーがある。独特の雰囲気で、二十歳の頃に入った時は少し気後れがしたものだ。

そのバーに久しぶりに行ってみることにした。

そこは兵役を終え、厳しい現実から逃げるように異空間のアジアへとたどり着いたイスラエルの男や女の溜り場であった。

「人が銃で撃たれる瞬間をみたことがあるか?」ラリッた目つきの男は自分のこめかみに銃をあてるジェスターをしてみせる。

僕は、ないけど想像はしてみると応え、後はTVモニターに映るサッカーマッチを眺めていた。
シンハービールのミニボトルを三本あけ、そのバーを出る。


ホテルに戻ると部屋の電話にメッセージが残されていた。

間違いなくエリカの声だった。

「誰にもこのことを言わないで。あなたも私も追われているの。」




(作り話 つづく(と思われます))



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