2007/02/01

マイクロクレジット

少し前の夕暮れ時、僕はある所でボートに乗っていた。
甲板から外の風景を眺めていた。

隣の男が携帯を使って電話していた。
それ自体は気にならなかったのだけど、でも自然と聞こえてくるその言葉、一瞬フランス語か、と思ったのだが、あとはなんだかズーズー弁みたいになってよくわからない。
それでつい横をチラチラみてしまったのだが、男は電話を切った後、「うるさくしてすまない」と僕に言った。

どこの言葉か聞いてみると、ルワンダの言葉らしく、フランス語の語彙もミックスされた言葉らしい。

僕も暇だったからついでに世間話をしていた。
彼は人権法を学ぶルワンダ出身の学生だった。
僕はルワンダに関する少ない知識のなかで、一つ気になったルワンダ大虐殺について聞いた。
彼は、これはフランスのせいだ、だが今は平和な国で外国人が街を歩いていても何の危険も無い、といった。

ボートを降りると、彼は僕の泊まるホテルを地図片手に一緒に探してくれた。
途中ベンチに座る人に「すいませんが、、」とホテルの場所を聞こうとしてくれた。
しかしその白人にきつい口調で"what do you want?"と英語で一言返され、
真っ黒の彼の顔が一瞬曇ったような感じになった。少しかわいそうになった。

最後ホテルをみつけて別れ際、僕は「明日食事をどうだろう?」と誘った。

彼とは翌日、近くのバールで軽い食事とビールを一緒にとった。

そこで他愛もない話をして別れたのだが、彼から聞いた話で一つ、気になった事があった。

彼はルワンダに帰ったら、婚約者と一緒に個人法律事務所を立ち上げたい、といっていた。

ルワンダで個人事業をするのは簡単なことか?と聞くと、銀行からお金さえ借りれれば大丈夫だろうというので、ルワンダにおける事業用資金の銀行融資利率の相場を聞くと「だいたい年利20%前後かな」という。

これは少しびっくりした。まあ何の裏付け資料もないから、実際のところはわからないけど、もしこれがほんとだとしたら、銀行からの融資利率がサラ金なみではないか。
ルワンダをはじめとしたアフリカ経済がずっとテイクオフできないのも、金融経済の未発達に帰する部分も多分にあるのだなと思った。

日本も中小企業が銀行から融資を受けられない場合は一気に商工ローンみたいなところに駆け込まなければならず、そのメザニンがないのが問題だとされている。でも比較論的にはまだマシかもしれない。
銀行から融資を受ける際に年利数十パーセントとか言われたら、それだけで事業意欲が削がれてしまう。

僕がこの話にちょっと興味をもったのは、2006年のノーベル平和賞がマイクロクレジットを実践するグラマン銀行の創立者Muhammad Yunus(バングラデシュ人)に与えられたというニュースを思い出したからだ。

Yunusは、1万円、2万円といった単位で融資を必要とする人達に低利無担保で貸し付けを行った。1万円、2万円だけでも途上国の低所得者層からすればなかなかアクセスができない資金だ。返済率は非常に高く、かつ融資を受けた人達が貧困から脱出するのに大きく寄与したと聞く。例えば鶏肉を売るためにまず卵を仕入れる、井戸を掘るためにスコップを買う、といったことにその数万円を使う訳だ。

途上国経済のテイクオフには重厚長大型社会インフラ整備の他にも必要なことがある気がする。



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